作品概要
2019年に刊行された長編小説で、現在は朝日文庫からも出版されています。テーマは「婚活」と「結婚」。婚活市場における男女の思惑や価値観をリアルに描き出しながら、「人はなぜ結婚を求めるのか」「本当に大切なものは何か」を問う物語です。
主人公は婚活中の女性・真実子と、彼女の婚約者で突然姿を消した男性・健一。健一の失踪をきっかけに、二人の関係性や婚活をめぐる背景が浮き彫りになっていきます。
主なテーマ
- 婚活社会のリアル
スペックや条件で相手を測る“市場としての婚活”がリアルに描かれます。そこには「理想と現実のギャップ」「年齢や収入による評価」といった生々しい現実があり、読者は思わず自分の価値観を照らし合わせることになります。 - 「傲慢」と「善良」の二面性
タイトルは、人が抱える二つの性質を象徴します。自己中心的な欲望や保身(傲慢)と、他者に優しくあろうとする思い(善良)。婚活を通して現れる人間の本性を、この二語が見事に言い表しています。 - 結婚の意味を問い直す
本作は婚活小説であると同時に、「結婚とは何のためにするのか」という普遍的な問いを投げかけます。安心や安定を求めるのか、愛情を求めるのか、それとも社会的な承認なのか――読者は自分自身の価値観を問われます。
読後の印象
ミステリー的な「婚約者失踪事件」を軸に進みますが、真のテーマは「結婚のリアル」と「人間の欲望と優しさ」。登場人物の心理描写が丁寧で、「自分だったらどうするだろう」と共感と葛藤を同時に覚えさせます。重くも鋭いテーマを扱いながらも、辻村深月らしい温かさがあり、読後には深い余韻を残す作品です。

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